1.KTCにおける在宅医療の現状について

1.はじめに

ここでは、川崎高津診療所(KTC)における在宅医療の現状のうち、患者背景と治療経過について分析したデータを報告します。なお、データは2011年12月末日現在のもので、患者数は200名です。

2.患者背景の分析

1.年齢分布
在宅患者の年齢分布をみると、31歳から106歳まで分布していますが、この中では80歳代が最も多く年齢の中央値は82歳でした。  

図1

図1 在宅導入時の原因疾患

2.在宅導入の原因疾患
次に在宅医療導入時の主な原因疾患を見ると、がん・悪性腫瘍が最も多く22%を占め、ついで認知症が18%、脳血管疾患14%、心血管疾患9%でした。その他は多彩な疾患が続き、老衰(看とり)も3%ありました(図1)。
これは、主病名であり、一人あたりの平均疾患数は4.7個でした。


図2

図2 要介護度の分布

3.要介護度
要介護度別の分布を検討すると、要支援は1と2が各々3%で、要介護度1~5が順に9%、22%、21%、20%、22%であり、3以上が63%を占めています(図2)。


4.老年症候群の分布
高齢者は「老年症候群」といって高齢者特有の症状を呈することが知られています。
それは、大きく分けて3つに分類されますが、その出現頻度を調査しました。
その結果、1が17%で、2および3がそれぞれ33%, 50%でした。すなわち介護が必要な症候群である3の症例が半数を占めることがわかります。  

<参考>
1.急性疾患に付随したもの 
(例:めまい、息切れ、頭痛、意識障害、不眠、腹痛など)
2.慢性疾患に付随したもので65歳ぐらいから徐々に増加 
(例:認知症、脱水、麻痺、浮腫、しびれ、便秘など)
3.日常生活活動度の低下をもたらし、介護が必要なもの 
(例:ADLの低下、骨粗鬆症、嚥下困難、尿失禁、せん妄など)

鳥羽研二、「老年症候群 老年医学テキスト改訂第3版」66-71ページ、2008年、メデイカルビュー社

5.老年症候群の項目別頻度
老年症候群1~3の全53項目の出現頻度を検討しました。その結果、平均の症候群数は4.2個でした。その内訳をみると、ADLの低下が最も多く、その他の項目としては視力低下、認知症(物忘れなど)、便秘症、麻痺、食欲低下、浮腫、低栄養状態などが多いという結果でした。また、この中には含まれませんが、皮疹、皮膚掻痒などの皮膚症状が意外に多く見られました。  

6.疾患数と症候数の相関
高齢者では疾患の治療も大事ですが、今どんな症候(症状)があってADLやQOLが低下しているかをみることは重要と思われます。当院の患者の平均疾患数は4.7個であり、平均症候数4.2個との間に有意差はありませんでした。また、相関関係を見てみると有意な相関は認められませんでした。疾患数に比して症候を多く有する患者もみられ、介護を含めたケアが必要と考えられました。  

図3

図3 年齢と症候数の相関

7.年齢と症候数の相関
一般的に年齢が増加すると症候数(老年症候群数)は指数的に増加するといわれており、大規模調査(前出資料)では入院入所患者のうち85歳では平均8個以上の症候を有するとされています。当院のデータでは母集団も在宅患者ということもあり、症候数も比較的少なく(平均4.2個)、年齢との相関は認められませんでした(図3)。


8.年齢と疾患数の相関
一方、年齢と疾患数との間にも有意な相関は認められませんでした。これらの結果から、高齢な患者ほど疾患数や症候数が多いわけではないことがわかりました。  

図4

図4 疾患数と処方数の相関

9.疾患数と処方数との相関
在宅患者の平均処方数は6.9件でした。一般に高齢者は多くの処方を受けていると考えられています。そこで、疾患数と処方数との相関を調べてみました。予想した通りに疾患が多くなるほど処方数が増えている傾向がわかります(r=0.430)(図4)。


図5

図5 生活環境

10.  生活環境
在宅患者の生活環境として、居住の状況を検討しました(図5)。その結果、お独り暮らし(独居)が13%、高齢なご夫婦のみ(日中だけも含む)のいわゆる「老老介護」世帯が25%にみられ、配偶者以外の家族と同居は52%でした。当院の特徴として施設患者は10%と少ないことがあげられます。


3. 治療経過

図6

図6 在宅療養中断の理由

 1. 在宅療養中断の理由
死亡以外の在宅療養の中断は68例(34%)に認められました。途中で中断した理由で最も多かったのは入院で、63%を占めました。次いで、診療の中止28%、施設入所9%でした(図6)。


図7

図7 入院の原因疾患

 2. 入院の原因疾患
入院の原因疾患で最も多かったのはがんで47%を占めました。がん患者の中には、終末期医療だけでなく、在宅での療養患者や新たにがんが発見されて入院した患者も含まれます。次いで多かったのは、誤嚥性肺炎30%、その他23%でした(図7)。


図8

図8 在宅療養の予後

 3. 在宅療養の予後
在宅療養患者の予後をKaplan-Meyer法による生存率曲線で検討しました。良性疾患(実線)と悪性疾患(破線)とで予後を比較検討すると、悪性疾患では有意に予後不良でした。ただし、先にも述べたように、在宅療養患者は中断例があり、観察期間の中央値は133日でした。なお、悪性疾患における生存期間中央値は43日でした(図8)。


1.在宅導入疾患は多岐にわたるので、総合的なアプローチが必要である。
2.在宅患者では疾患の治療のみならず症候群に対する介護を含めたケアが必要である。
3.高齢者ほど疾患数、症候数が増加するという傾向は認められなかった。
4.高齢者では疾患数が多いほど処方を多く受けている傾向があった。
5.介護上問題となる独居や老老介護が38%に認められた。
6.在宅療養は死亡以外の中断例があり、観察期間の中央値は133日であった。
7.悪性疾患(がん)の短期予後は良性疾患(慢性疾患)に比べて不良であった。また、悪性疾患の生存期間中央値は43日であった。


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