4.在宅患者の皮膚水分量の測定

1.高齢者の皮膚水分量は少ない?

高齢な方ほど皮膚が「かさかさ」している、「水分が少ないのでは?」ということが言われますが、これは本当なのでしょうか?
当院の在宅療養患者の老年症候群のなかでも皮膚症状(乾皮症、皮膚発疹など)は比較的頻度が高いことが分かっています。これは、皮膚の水分量の減少が原因なのでしょうか?
そこで、在宅療養患者の皮膚水分の測定をしてみました。

2.皮膚水分量の測定

ロゼンスター社製の肌湿度計(スキンモイスチャーチェッカー)SR-101を用いて水分量の測定をしました。これは、皮膚表面の誘電率より水分量の絶対値をパーセント表示するもので、測定しているのは角質層の表面の水分と考えられています。また、皮膚の部位により測定値が異なることが言われているので、今回の検討では全身9か所(1額、2目尻、3頬、4前腕、5手背、6手掌、7腹部、8下腿、9足背)を測定しました。対象は在宅療養患者45名(平均年齢81.9歳)で、健常者(コントロール)は7名(平均年齢38.6歳)でした。

3.結果と考察

1)    全平均水分量は33.1±2.7 %でした。
2)    部位別の平均水分量は、顔面の中で額、目尻に比較して頬が低い結果でした(図1)。器械の説明書によれば、皮膚(顔面)の水分量は37%以上がまずまずの値といわれています。額は皮脂が多く、目尻は皮膚が薄いことが計測に影響することが言われています。また、手掌はいずれの部位と比較しても有意に低い結果でした。角質層が厚いことや、高齢者では発汗が少ないことなどが影響しているのかもしれません。

図1

図1 部位別皮膚水分量

 また、前腕の分布に比べると手掌の分布では分散の程度が大きい結果でした。個人の平均値との相関が最も高かったのは前腕の水分量でした(r=0.7969)(図2)。さらに部位間の相関を見ると、顔面間、頬と前腕、前腕と手背は相関係数が0.6以上で関連があると考えられました。

図2

図2 前腕と平均水分量の相関

  3)    次に、年齢と全平均水分量の相関をグラフにすると、相関はありませんでした(図3)。すなわち、年齢が高齢であるからといって必ずしも水分量が低いわけではないことがわかりました。

図3

図3 年齢と平均皮膚水分量

  4)    一方、健常コントロール群では年齢が高くなるにつれ皮膚水分量は減少していました(図4)。平均水分量は35.7±0.9 %であり、在宅療養患者と比較すると有意に高い結果でした(p<0.0001)(図5)。但し、これは年齢層が異なっていることと、サンプル数が少ないこともあり、バイアスがかかっています。

図4

図4 健常者の水分量

図5

図5 水分量の比較(健常者vs在宅患者)


  5)    在宅療養患者の年代別に水分量を比較しました(図6)。60歳代、70歳代、80歳代、90歳代にわけて検討したところ、70歳代は有意に90歳代より低い結果でした(p=0.0374)。

図6

図6 年代別皮膚水分量の比較

  6)    皮膚疾患あるいは症状の有無と皮膚水分量との相関は認められませんでした。したがって、これらの発症原因には水分以外の因子の関与が示唆されました。

4.まとめ

1.顔面計測では、額や目尻に比較し、頬の値が低かった。
2.手掌の値は、他のどの部位よりも有意に低値であり、分散も大きかった。
3.前腕の水分量が平均水分量と相関していた。
4.在宅療養患者では、年齢との間に相関は認めなかった。
5.70歳代は90歳代に比較して有意に低値であった。
6.皮膚疾患(症候)との相関は認められなかった。
 


ページトップ

© Copyright Kawasaki Takatsu Clinic All rights reserved.