7.認知症患者に対する在宅脳波測定

1.認知症の患者数は?

近年、日本が超高齢化社会を迎えることにより、認知症患者も増加の一途をたどることが予想されます。ところが、認知症患者の実数についてはその実態が明らかでないのが現状です。よく引用されている厚生労働省の「認知症高齢者の日常生活自立度」Ⅱ以上の高齢者数に基づく推計値によれば、平成17年度には推計患者数は169万人で、平成27年度では250万人まで増加すると推計されていますが実数はさらに多いと思われます。当院における在宅導入疾患で最も多いもの認知症で25%を占めています。

2.診断方法は?

普段、患者と接することが多いご家族からの訴えをお聞きすることが問診をする上で重要です。診断基準はDSM-IVなどの疾患コードを用いることが一般的ですが、要約すると以下のようになります。

1)        記憶障害がある(ある期間の記憶が抜け落ちる)
2)        失行、失認、失語、実行機能障害のどれかがある
3)        上記のため、社会生活に支障をきたす
4)        上記の状態に脳などの身体的な原因があるか、あると推測できる
5)        意識障害はない

もちろん、画像診断などで他の疾患を除外する必要があります。質問紙法による各種の検査法もありますが、ある程度進行してしまった患者では検査は困難です。また、これらの症状は日々変化することもあります。

3.治療と経過観察はどうするか?

現在のところ認知症を治癒させることは困難であり、アセチルコリン分解酵素阻害剤である「アリセプト」のような内服薬も、早期に開始することによって進行を遅らせるという効果を期待するものです。実際にはこの疾患に対する「ケア」を中心にした体制作りが急務と考えられます。患者の立場に立った「ケア」と、実際にそれを行う方々が疲弊しないような環境が重要です。専門スタッフのいるデイケアやショートステイ、あるいはグループホームの利用も考えられます。また、普段の病状の推移を記録し、それを中心となる医療機関へフィードバックすることも経過観察する上では重要でしょう。

4.当院における在宅脳波測定法

脳波検査は、神経細胞(ニューロン)の活動状態を頭の表面から記録する方法であり、100億とも200億個とも言われる神経細胞の働きをリアルタイムで記録する方法と言えます。認知症では個々の神経細胞の機能低下、あるいはネットワークの減少により記憶や認知機能に関連する症状が出現すると考えられます。とくに閉眼時のアルファ波の「揺らぎ」があると言われており、脳波検査から認知症患者の特徴を捉えることも不可能ではないと考えられます。しかし、一般の脳波検査は多数の電極を付け機材も大がかりであり、在宅で施行するのは困難です。

図1

図1 MindSet®を用いた脳波測定

そこで、われわれはこれを簡便に行うためにNeuroSky®社製のヘッドフォン型脳波記録装置(MindSet®)を用いてデータをPC上で解析し、認知症に特有な所見があるかを研究しております。方法は、安静閉眼時の脳波を3分間測定します(図1)。データはリアルタイムでPCに転送され、波形のデータとなります(図2)。また、精神の集中やリラックスに関連した波形のアルゴリズムによる解析も可能です(図3)。

図2

図2 フィルター後の波形データ

図3

図3 集中とリラックスのアルゴリズム波形


5.脳波解析結果

健常者の脳波データをカオス時系列変換して3Dプロットを行い(図4)、最終的にリカレンスプロットを行いました(図5)。一部四角形や等高線のひずみが見られることから、時系列でみると閉眼中でも脳波(多くはアルファ波)の変動があることが推察されました。

図4

図4 カオス時系列変換の3Dプロット(健常者)

図5

図5 リカレンスプロット(健常者)


一方、認知症患者のデータを同様に解析しました(図6)。その結果、リカレンスプロットのグラフは右上がりの四角が均一に並んだものになり、等高線の間隔も広くなっています(図7)。この症例では、1分間ずつ3分間のデータを比較しましたが同様の結果でした。また、15秒ほどの解析でも健常者との間に差があることが明らかとなりました。
現在、認知症患者の脳波の特徴を解析中です。

図6

図6 カオス時系列変換の3Dプロット(認知症患者)

図7

図7 リカレンスプロット(認知症患者)


在宅脳波測定KTC2010

在宅脳波測定KTC2010(583.8KB)



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