8.在宅患者のMNAによる栄養評価

1.MNAとは?

在宅患者の栄養状態を評価するために、ネスレ社(Nestle)による簡易栄養評価表(Mini Nutritional Assessment, MNA)を用いた調査を行いました。この評価法は、BMIを含む6つのスクリーニング項目と、12のアセスメント項目より成り、総合評価は30点満点でスコア化されます。その結果をもとに、17点未満は低栄養、17点以上~23.5点未満が低栄養の恐れあり、23.5点以上が正常と判断されます。これらの分類をもとに高齢者の予後を比較すると正常者に比較して低栄養の恐れあり、あるいは低栄養の患者の予後は不良であることがわかっています。したがって、この評価をもとにした積極的な栄養面での介入が高齢者の予後改善や合併症の予防につながると考えられています。

図1

図1MNAスコア

図2

図2在宅患者の栄養状態


2.在宅患者での検討

当院の在宅患者36名の検討では、MNAスコアの中央値は21点でした(range, 14~27.5)(図1)。また、スコア別に検討すると、正常と判断された患者は19%にとどまり、低栄養の恐れありが55%、低栄養が26%でした(図2)。したがって、在宅患者の81%は何らかの栄養障害を有し、予後も不良である可能性が示唆されました。また、このスコアはBMIと相関があることがわかりました(r=0.533)(図3)。さらに、低栄養群(M)、リスク群(R)、正常群(T)のBMIの中央値はそれぞれ16.4, 19.5, 23.4であり、BMIからの層別化がある程度可能と考えられました(図4)。患者によってはBMIの計測が困難な場合があります。アセスメント項目には上腕周囲の長さ、ふくらはぎの長さの項目があり、今回の検討では、上腕周囲の長さがこのスコアと相関していました(r=0.592)(図5)。この評価法を簡略化したshort formではBMI(S1)のかわりにふくらはぎの周囲長(S2)を用いることもできます。実際これらを計算してみるとMNAスコアとの相関がみられました(S1: r=0.751, S2: r=0.729)。しかし、ふくらはぎの長さは下肢の浮腫があると高く評価されてしまう問題点があります。

図3

図3BMIとMNAスコアの相関

図4

図4MNA分類別のBMI値


図5

図5上腕周囲長とMNAスコアの相関

次に、個々の症例がMNAスコアによりどのように分類されているかを検討しました。変数として、BMI、上腕周囲の長さ、ふくらはぎの長さ、MNAスコアを用いて主成分分析を行いました。主成分得点の分布グラフ(図6)では、左上に向かってMNAスコアが高くなることがわかります(1:低栄養群、2:リスク群、3:正常群)。また、1と2の境界は一部不明瞭です。

図6

図6 主成分得点分布

次に、これらのデータをもとに多次元尺度法(MDS)による分析を行いました(図7)。その結果、今度は右上に向かってMNAスコアが高くなっていることがわかります(赤:低栄養群、緑:リスク群、青:正常群)。これは、基本的には図6と同様な分布を示しています。

図7

図7 多次元尺度図

4次元プロットによりBMI、上腕周囲長(UL)、ふくらはぎの長さ(LL)、スコアの群(低栄養群:青、リスク群:緑、正常群:赤)をすべてプロットすると図8のようになります。

図8

図8 4次元プロット

3.今後の課題

今回の検討では、在宅療養患者は低栄養、あるいはそのリスクがある方が81%を占めることがわかりました。しかし、体重減少がない方が70%以上を占めており、この評価法では正常と判断されず、ADLの低下はあるものの日常生活を送っている方が多いわけです。実際には必要カロリーが摂取されているかどうかが重要と思われます。そこで、身長より推定必要カロリーを計算した結果、その中央値は1,017 kCalでした(range, 744 kCal~1,348 kCal)(図9)。今後は日本人にあったMNAスコアのカットオフ値の検討や、アルブミン値なども取り入れた評価の検討も必要と考えています。

図9

図9 推定必要カロリー量


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