24 認知症患者の重症度変化

1 はじめに


厚労省の第5期介護保険事業計画では、地域包括ケアがうたわれていますが、その中でも認知症患者のケアは重点項目としてあげられています。このためには、患者に対して医療のみならず介護や看護も含めたケアを提供する必要があるわけですが、その際、認知症患者の状態(認知機能や生活機能など)を客観的に評価する必要があります。 そこで当院では、ワシントン大学のHughesらによって1982年に開発されたClinical Dementia Rating (CDR)の日本語版(CDR-J)を用いた評価をおこなっています。これは、記憶、見当識、判断力と問題解決能力、地域社会の活動、家庭および趣味、身の回りの世話の6つのカテゴリーを0から3点の5段階で評価するもので、結果は、合計点(BOX総合得点)とCDR総合判定(0~3)で示され、数値が高いほど重症度が高いと判定されます(表1)。

表1

表1

2 認知症患者の重症度


当院で訪問診療を受けているアルツハイマー病患者28名を対象にCDR-Jによる重症度評価を行いました。その結果、アルツハイマー病と診断されて在宅診療を開始した患者でも、CDR-JではMCIと考えられる患者が17.9%みられました。また、在宅療養を受けている患者では、CDR2の患者が最も多く39.3%であり、CDR3も21.4%みられました。すなわち、中等度から重度の患者が全体の60%以上を占めていました(図1)。

図1

図1

3 重症度の推移


初回検査から、6ヶ月後に同一患者で再度CDRの調査をおこないました。その結果、MCIとCDR1は減少し、CDR2はあまり変化なく、CDR3は増加していました(図2)。この中には無治療患者や内服の患者が含まれていますが、全体としてみると時間の経過とともにスコア上は症状が進行していました。

図2

図2

4 治療効果の検討


今回の検討例では、無治療の患者とドネペジル内服中の患者がいました。このうち、ドネペジル内服中の患者を継続群(D群)とガランタミン内服群(G群)とにわけ、無治療群(C群)との間でスコアを比較しました。

まず、無治療の患者のスコアの変化をBOX集計値で見ると、6ヶ月後の方が有意にスコアの上昇がみられました(図3)(p=0.0385, t-test)。すなわち、治療をしないとスコア上は症状が悪化する事が示唆されました。

図3

図3

次に、無治療群(C群)、ドネペジル群(D群)、ガランタミン群(G群)のスコアの変化をベースラインからの変化量で検討しました。その結果、D群の変化量はC群と差がなかったのに対し、G群ではC群と比較して有意に(p=0.0185, covariance analysis)低下していました(図4)。すなわち、ガランタミンには治療効果があると考えられました。

図4

図4

5 終わりに


このように、ある指標を用いて認知症患者の状態の変化を記録する事は、治療効果を見る上でも重要と考えられました。今後は、地域の連携パス等にこのような指標を導入し、医療や介護の現場で用いる必要があるでしょう。


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