27 100歳以上高齢者(センテナリアン)の研究

1 よき加齢とは


センテナリアンには以下の3種類があります。1つは、100歳に至るまで全く疾患をもたない、いわゆるエスケイパー(escapers)で15%をしめます。次の43%は80歳まではさしたる病気もなく、その後に疾患にかかるパターンで、デレイアー(delayers)といわれます。最後の42%は80歳以前に疾患にかかるが、それらを克服して100歳まで生存するサバイバー(survivors)とよばれるグループです。このように、疾患にかかるとしても、それが人生の最後の方に集約されているのが特徴であり、これを「合併症の圧縮仮説」(compression of morbidity hypothesis)といいます。したがって、よき加齢とは、「年をとれば取るほど、それまでずっと健康であった」というライフサイクルといえます(文献1)。

2 センテナリアンの疫学


米国は最も多くセンテナリアンが生存しており、その数は推計で70,000~80,000人とされています(2010年現在)。これは、人口6,000人に一人の割合で、85%が女性です。とくに、110歳以上の高齢者はスーパー・センテナリアンとよばれ、これは700万人に一人の割合で、全米では60~70人が生存しています(2010年現在)。日本は米国に次いでセンテナリアンが多い国で、推計で50,000人が生存しています(2012年9月現在)。これを人口10万人あたりの数でみると、日本は最もセンテナリアンが多い国と言えます(図1)。しかし、2010年には戸籍上の問題が発生し、行方がわからない高齢者も多く、その実数には疑問がもたれています。

図1人口10万あたりのセンテナリアンの比較

3 センテナリアンの予測因子


これまでの研究(文献1)から、以下の因子が重要と考えられています。
1) 肥満の人はほとんどいない。男性の場合は、ほぼやせている。
2) 実質的な喫煙歴はまれ
3) ストレスをうまくかわせる
4) 15%ほどのセンテナリアンは思考能力の衰えはないので、すべてが認知症になるわけではない。アルツハイマー病は避けられないわけではない。神経学的にも健康な脳の持ち主がいる(無病加齢)。
5) センテナリアンの女性高齢者は35歳〜40歳以降での出産経験があることがわかっている。40歳以上での出産経験を持つ女性は、そうでない場合に比べて100歳まで生きる確率が4倍高い。生殖機能の老化が遅い事は、ほかの臓器の老化も遅い事が示唆される。ゆっくりとした加齢や、疾患にかからない、あるいは疾患にかかる時期が遅いことは、生殖機能の衰えと逆相関し、その後高齢まで生きられるよい兆候。 
6) センテナリアンの半数は一親等内、あるいは祖父母に高齢になる人をもつ。また、多くは例外的な高齢になる子孫をもつ。センテナリアンの男の子孫は同時期に生まれた人の17倍も100歳になる可能性がある。また、女性の子孫は8.5倍も100歳以上になる可能性がある。
7) センテナリアンの子供たちは、親の影響を受け、心臓血管疾患や糖尿病になる時期が遅れ、全死亡率にも影響がある。
8) 高齢家系の中には、センテナリアンになる集団が有るが、これは偶然でなく、その家系が共通にもっている因子があるようだ。
9) 性格の検査では、センテナリアンの子孫はそうでない子孫に比べてより神経質でなく、外交的である。
10) 遺伝的な変異が「例外的な高齢」に関与していると考えられる。高齢になるほど遺伝が関与する率が高くなり、106歳以降ではとくに高い相関が有る。

4 生まれつきか育ちか


双子の研究では、加齢に影響するのは環境因子が70~80%、遺伝因子が30~20%と言われています。しかし、センテナリアン研究からは、高齢になればなるほど遺伝的因子が強く影響する事が示唆されています。これまでに、lipoprotein代謝、insulin/IGF-1シグナリング遺伝子などの関与が示唆されています。また、最近の研究(文献2)では、RNA editing 遺伝子である、ADARB1, ADARB2の遺伝子多型(single nucleotide polymorphisms, SNPs)の関与が明らかにされています。また、281のSNPsでセンテナリアンの予測も可能であるとの報告(文献3)があります。たとえば、アルツハイマー病に関与する遺伝子は38種類あります(図2)。

図2アルツハイマー病関連遺伝子(文献3図6)

5 センテナリアンの生存率は?


当院で在宅療養をうけたセンテナリアンは6名であり、全患者の1.4%でした。また、女性が5名と大半を占め、年齢の中央値は101歳でした。主病名は老衰が3例で、うち2例を在宅看取りしました。また、生存期間の中央値は35日で、2年以上生存例もみられました(図3)。

図3センテナリアンの生存曲線

参考文献
(1) www.bumc.bu.edu/centenarian/overview/
(2) PLoS ONE 2009, 4(12):e8210.
(3) PLoS ONE 2012, 7(1):e29848.


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