当院が共同開発した医療機器


在宅医療では、診療そのものを居宅(自宅や施設)で行うために、機材を使った検査をすることが困難になります。また、診療記録であるカルテ自体も持ち歩かねばならず、モバイル環境で使用でき、病院間でも共通に使えるものが必要になります。当院では開設当初より医工連携を重視して、経済産業省、通産省、文部科学省などの公募研究にも積極的に参加し、企業や大学とともに医療機器を開発してまいりました。また、最近ではCOVID-19に関する医療機器の開発にも取り組んでおります。

1携帯型脳波計を用いた認知症患者の脳波測定
従来の脳波測定には大きな機材が必要であり、病院まで行かないと検査が受けられないという制約がありました。また、認知症患者の脳波の特性に関する研究は少なく、診断面での補助となるような情報が得られれば臨床的にも有用と考えられます。そこで、われわれは米国NeuroSky 社、富士通コンポーネント社と共同で、携帯型脳波計の開発に取り組み、認知症患者の脳波(α波)と健常人の脳波にはパターン上の違いがあることを明らかにしました1)

2咽喉マイクロフォンと音声解析ソフトを用いた嚥下機能検査
嚥下検査には透視下にバリウムを嚥下してみる方法や、内視鏡検査により実際の咽頭・喉頭を観察する方法がありますが、簡便性や記録性に難点がありました。われわれは、咽喉マイクロフォン(南豆無線)の音声をテープレコーダーに録音し、これを音声解析ソフト(スタンフォード大)で解析することで嚥下状態を在宅で評価する方法を確立しました2)。

3遠隔在宅診療の有用性に関する臨床試験
厚生労働省科学研究補助金事業として、遠隔在宅診療に関する他施設共同研究を行いました。携帯端末とViewSend 社クラウドTV 会議システム(ViewSend RAD-Z)を用いて検討を行った結果、有害事象はなく訪問時間の短縮につながることが示唆された一方、家族のQOL 向上は認められず、診療報酬面での課題が残されました3)

4睡眠評価装置を用いた高齢者の睡眠状態の評価
睡眠状態の記録は、現在ではスマートフォンや腕時計などでも簡便に行えるようになりましたが、体動や呼吸、心拍数などを総合的に記録して睡眠深度を評価するシステムをASD 株式会社と共同開発しました4)。これによって、高齢者ではノンレム睡眠時間の短縮、レム睡眠時に周期的にトイレに起きるといった行動パターンが明らかになりました。

5ウェアラブル心電図計を用いた遠隔モニタリング
イメージワン社のウェアラブル心電図計「duranta®」を2014 年、日本で最初に在宅医療に導入し、独居患者の看取りなどの遠隔モニタリングに有用であることを報告しました5)。なお、現在本製品は株式会社ZAIKEN が取り扱っています。

6病院間共通の高速カルテ閲覧システムの在宅医療への導入
経済産業省事業の一環としてViewSend 社のシンクライアントシステムを用いた高速画像閲覧システムの開発を行い6)、多職種連携によるオンライン診療への導入試験を行いました7)

7モバイルVPN ルーターの開発
遠隔医療では、通信内容のセキュリティが重要になります。そこで、携帯端末に接続してセキュアな高速通信が可能となる、モバイルVPN ルーターの開発をNTT データアイ、Planex 社と行い、オンライン診療に導入しました8)

8飛沫感染予防のフェイスシールド
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染予防対策では、医療従事者を飛沫感染から守る必要があります。折しも医療物資が不足している最中、PRUSA 社のデータ9)を用いて3D プリンターによるフェイスシールドを作製しました。

9アンビューバックを用いた簡易式人工呼吸器
COVID-19 では、重篤な呼吸障害が急速に生じる可能性があり、医療機関における人工呼吸器の不足が危惧されました。また、入院が困難な患者に対し在宅での人工呼吸器を使用せざるを得ない状況も想定されています。そこで、既存の医療機器であるアンビューバッグを用いた廉価版の人工呼吸器をマサチューセッツ工科大学(MIT)と共同製作しました10)

10シュノーケルマスクを用いたN95 フェイスマスク
COVID-19 患者の診察には、最低でもレベル2の防御策が必要であり、N95 マスクとともにゴーグルの装着が必要です。ところが、N95 はリークがないように装着すると意外と呼吸が苦しく長時間の作業は困難です。おりしも、海外での購買競争に敗れた日本では、N95 マスク自体が手に入らないという厳しい現状があります。かといって、防毒マスクやPAPR などは高価であり、日常診療では現実的ではありません。そこで、ゴーグルとマスクの両方の機能を兼ね備えたものとして、シュノーケルマスクに着目し、スタンフォード大学と共同でN95 対応フェイマスクを開発しました11)

文献
2)松井英男:人生をわが家で終える 在宅医療の現場から
日本経済新聞出版 東京 pp.160-162 2011 年
3)松井英男,岡本祐一,嗣江建栄: 遠隔在宅診療の有用性に関する臨床試験.
日本遠隔医療学会雑誌,8(2):230-232, 2012
7)松井英男,小林隆司,嗣江建栄: 遠隔画像共有技術を用いたオンライン診療の臨床研究.
川崎高津診療所紀要,1(1):6-13,2020
8)郡 隆之,松井英男,浅尾高行他:携帯型VPN ルーターの開発.
日本遠隔医療学会雑誌,10(2):242-245,2014

2021/01/18 v4.0


開発機器2021v4.0

開発機器2021v4.0(2.2MB)


ページトップ

© Copyright Kawasaki Takatsu Clinic All rights reserved.