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アルツハイマー病に対する抗体治療薬

2021年06月8日

アルツハイマー病 (AD)に対する治療薬は決定的なものがみつからないまま、アリセプト®の発売からすでに13年が経過しました。

ADの発症原因にはいくつかの仮説がありますが、その一つが脳内にアミロイドβ(Aβ)が蓄積するというものです。そのため、この分子を標的とした免疫治療が考案されワクチンも作られましたが、重篤な副作用である「髄膜脳炎」を引き起こしたため開発が中止となりました。しかし、死亡した患者の脳を詳細に調べた結果、Aβが減少していることがわかり、その後の抗体治療へと発展していきました。当初、第III層臨床試験(EMERGE, ENGAGE)が国内でも行われましたが、軽度から中等症に対する治験では残念ながら有効性は確認できませんでした。当院の患者さんもこの治験に参加しましたが、そのときの状況は2014年の東京新聞でも紹介しています(下記参照)。しかし、サブグループ解析の結果、初期段階(MCI)で用いることにより効果が期待できるということで申請が継続されていたようです。

今回、米国食品医薬品局(FDA)は、AD治療薬として米国バイオジェンとエーザイが開発した抗体治療薬(ADUHELMTM, 一般名:アデュカヌマブ)を迅速承認しました。その根拠は、臨床試験において18ヶ月後の脳内アミロイドβプラークが59~71%減少したというものです。有害事象としては、MRIで観察されるアミロイド関連画像異常(ARIA)が起こることで、頭痛、めまい、錯乱などの症状を認めることがあります。そのため、この承認はあくまで仮のものであり、さらなる検証試験が必要とされています。

一方で、抗体治療薬は費用もばかになりません。月一回の注射にかかる費用は100万円とも言われ、18ヶ月投与になると一人あたり1,800万円もかかることになります。ADに対する治療薬の開発は、喫緊の課題ではありますが、薬事承認を経て保険適応となると、医療経済的な側面からの検討も必要になりそうです。

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