お知らせ

新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 明るい話題

2021年08月24日

 日本全国でのCOVID-19患者数の増大から、なにかと不安なニュースが多いこの頃ですが、あえてここでは明るいニュースだけをとりあげます。
 

1 患者数の動向

 そもそも今回のCOVID-19患者数(症状があってSARS-CoV-2の診断が確定している患者数)の増加は世界的な規模で起きており、インドでの感染者数の減少から6月のイギリスでの増加、そして現在のアメリカやイスラエルでの感染爆発と連動しています(Our World in Data)。いち早くワクチン接種をした国々では、規制を緩和したわけですが、現在の患者、とくに入院患者や死亡者の多くはワクチン非接種者といわれています。また、いわゆるブレークスルー感染(ワクチン接種後の感染)はワクチン効果の減少(少なくとも抗体価の減少)とも関連があるようです。しかし、ワクチン効果は抗体だけでなく、T細胞系の免疫もあるので、あまり心配しすぎる必要はないでしょう。
 さて、インドなどの例でもわかるように、感染者数は必ず減少します。統計の専門家がおっしゃるように、指数関数的にどんどん増えることはありません。これは、いままでの日本での感染流行からも明らかであり、いずれの波もかならず減少に転じています。これには、非薬品的な介入(人流抑制、環境要因など)に加え、ウイルス自体が消滅するためと考えられます(実際、武漢株は日本では存在していません)。新型コロナウイルスの変異の頻度はむしろ少ないので(1ヶ月で塩基の変異が2個程度)、いろいろな選択圧で有利な株が生き残っている可能性があります(方向性選択)。SARS-CoV-2を継代培養した東京大学医科学研究所の観察では、10代目で弱毒株(動物での病原性低下)が得られたそうです(河岡教授私信)。現在の世界的な流行は、例えは悪いかもしれませんが、人を通じてウイルスを培養しているような状況です。個人的には、一年間に3回の波が来るとして、弱毒化するには3年ほどかかるとみています。もちろん、ワクチンや新規薬剤などの登場でさらに短くなったり、逆に耐性化により長期化する可能性もあります。
 世界的に見ても死亡者数は減少しています。日本の場合、人口100万人あたりの死亡者数は、1日で0.19人(1週間平均)です(Our World in Data, 2021年8月22日現在)。いま流行しているデルタ株は、ウイルスの排出量も多く、感染力は強まっていると考えられますが、ウイルス自体の毒性が強まったということはありません。ただし、ウイルス量が多ければ重症化すると考えられます。
 

2 経口治療薬

 発熱などの症状があってCOVID-19と診断されると、「原則自宅療養」となります。この経過観察中に重篤化するのを防がなければなりませんが、日本では、「悪化するまで恐怖と戦いながら過ごす」ことが当たり前で、「重症化しても入院できる保証はない」という恐ろしい状況です。診断されてからすぐに治療がはじめられれば、この不安は一掃されるはずです。以下、経口治療薬として初期治療に有効と考えられるものを挙げてみます。
 

1)  ウイルスタンパクとの結合から予想される既存薬
ウイルスがヒトの細胞に感染してからまず行うことは、非構造タンパク(nsp)と言われる一連のタンパク(タンパク分解酵素など)を作ることで感染した細胞を乗っ取ることです。これと結合できる物質を網羅的に検討した結果、ある種の解熱鎮痛剤と抗精神薬が阻害物質の候補となっており、後ろ向き研究ですが実際の臨床データでも効果があるようです。

2)  タンパク分解酵素阻害剤
いわゆるウイルスのメインプロテナーゼ阻害剤 (Mpro, 3CLプロテナーゼ阻害剤)として開発が進んでいるのがファイザー社製のPF-07321332(第1相)、シオノギ製薬のS-217622(第1相)などです。

3)  RNA合成阻害剤

以前、著書(新型コロナウイルス感染症30の研究, p12)でも紹介した米国メルク社のモルヌピラビル(Molnupiravir/EIDD-2801)の第3相臨床試験が終了間近です。これは、ウイルスRNAに間違った部品(G/Aの部位にM)を送り込むことでRNAに変異を起こさせるものです。また、米国アテア社(ロッシュ+中外製薬)が開発しているRNAポリメラーゼ阻害剤であるAT-527も第2相臨床試験が継続中です。レムデシベルはRNA合成阻害剤として唯一認可を受けているものですが、静脈投与することが難点でした。また、上記のモルヌピラビルと異なり合成酵素を止めてしまうので耐性化が心配です。これを経口投与して腸管から吸収されるように脂質製剤としたレムデシベルヌクレオシド(GS-441524)が開発され、細胞を用いた実験で効果を示しています。
 

3 ワクチン開発

 現在、mRNAワクチンとしてコミナティ(ファイザー社)、COVID-19ワクチンモデルナ(モデルナ社+武田薬品)、ウイルスベクターワクチンとしてバキスゼブリア(アストラゼネカ社)の3つが主として用いられています。このうち、ファイザー社のものは、FDAでの正式認可も近いようです。さらに、抗体価の減少から、3度目の接種も検討されています(ファイザー社は2度目の接種から8ヶ月後)。また、4つ目の期待されるワクチンとして、ノババックス社のペプチドワクチン(NVX-CoV2373)(第3相)も注目されています。これは、スパイクタンパクの全長の糖タンパクとMatrix-Mというアジュバント(免疫賦活剤)を含むもので、副作用も少なく、発症予防効果は89.7%と報告されており、変異株にも効果が期待されます。
 これらのワクチンは、血中の抗体価を高めることがわかっていますが、COVID-19の発症は予防できても、感染の予防はできません。実際のCOVID-19は鼻咽頭から上〜下気道への感染から始まるわけで、粘膜での免疫が重要となります。アストラゼネカ社のワクチン(ChAdOx1 nCoV-19/AZD1222)を経鼻投与した動物実験では、鼻腔や肺でのウイルスを減少させる効果が得られています。今後、筋肉注射にかわる投与法として一般化するかもしれません。
 
 
 
2021/08/24 川崎高津診療所コラム v1.3
 

ページトップ