お知らせ

講演会のお知らせ

2022年04月15日

 TA講演会は、毎月第4週の木曜日に二子玉川ライズで開催されますが、コロナ禍のこともあり参加人数の制限や感染対策を十分に取り、札幌会場・福岡会場とはオンラインでつないで開催する予定です。なお、講演内容は当院が発行する「川崎高津診療所紀要」に随時掲載する予定です。

2022年(令和4年)

1 フレイル予防(2月24日)

フレイルとは高齢者にみられる身体能力の低下、低栄養、免疫力の低下、ストレスに対する抵抗力の低下をきたすもので、健康問題のみならず介護、社会的な問題も含みます。これを予防するにはどうしたら良いのでしょうか。フレイル健診も始まっていますが、単なる質問だけに終わるのでは、介護予防事業での失敗がいかされません。転倒予防、栄養問題など当院が取り組んできた内容を紹介するとともに、コロナ禍と高齢者、これからの地域での取り組みについても紹介します。

2 胃がんの化学療法と分子標的治療(3月24日)

分子標的治療薬の登場により、胃がんの化学療法が大きく変わろうとしています。これまでの胃がん化学療法を紹介するとともに、分子標的治療の臨床試験とその問題点を指摘します。

3 間葉系幹細胞を用いた再生医療(4月28日)

iPS細胞による再生医療が話題になっていますが、治療に使用できるレベルの細胞を調整するには大規模な設備や時間を要し、コストのみならず腫瘍化の問題も無視できません。ここでは、間葉系幹細胞を用いた再生医療について、アルツハイマー病、肝硬変、炎症性腸疾患、COVID-19を例にとって紹介します。

4 オミクロン株による新型コロナウイルス感染症(5月26日)

 オミクロン株の特徴として、 感染スピードが速く、各地域でそれぞれの変異株が流行している状況が挙げられます。ワ クチンの追加接種や病原性の低下もあって、多くは軽症で済むことが多い印象を受けます が、高齢者での感染では新たな問題点も浮き彫りになっています。すなわち、高齢者の入 院治療のタイミングと高齢者施設でのクラスター対策です。

5 日本の感染症発生動向(6月23日)

 日本の感染症は、新型コロナウイルスだけではありません。結核は罹患率の減少はみられるものの、いまだ致死率の高い疾患です。また、都市部では若年者を中心に梅毒の蔓延も問題になっています。国民の感染症の対策が徹底したせいか、定点措置のある5類感染症は、感染性胃腸炎以外は例年より減少傾向です。確かにここ2年くらいは、インフルエンザは影を潜めています。一方で、ヨーロッパを中心に、サル痘の蔓延が一部の集団で報告されており、新たな脅威となっています。

 新型コロナウイルスの感染者数の減少は緩余であり、そのゲノム解析からもオミクロン株が独特な変異を繰り返していることがわかります。幾つもの種類があるので、これまでのようにすぐに収束することがないのです。また、より感染力があり免疫機構もすり抜けるような変異株(BA.4/5など)の出現も報じられていることから、決して予断を許さない状況といえます。また、症状は軽いものの感染後の後遺症の問題(消化管や脳神経への影響、さらには小児の肝炎など)もあり、現在の疾患をCOVID-22という人さえいます。日本の実臨床データからは、オミクロン株になってからのワクチンの感染予防効果に関しては、2回目の接種後にむしろ感染が増加してしまう世代があることがわかりました。ワクチン接種による高齢者での免疫力低下も懸念され、当院でも帯状疱疹の発生頻度が上がった印象があります。もう一つ気になることは、超過死亡の推移です。昨年春から夏と冬期にかけて超過死亡が発生しており、これは新型コロナウイルス感染症以外の原因、特に老衰死によるものということがわかっています。

 

6 老化を治療する(7月28日)

 世界保健機構(WHO)では、老化は全身症状の一つであり、「加齢にともなう内在的能力の低下」と定義されています(ICD-11)。日本は、世界の他の国に先駆けて高齢化社会に突入しており、健康寿命を延伸することが喫緊の課題となっています。健康状態を維持しつつ歳を重ねるにはどうしたらよいでしょうか。そのためには、老化のメカニズム自体を解明することが必要であり、世界中でこの課題への挑戦が続いています。近年、老化のメカニズムが明らかにされつつあり、老化自体を治療する取り組みも始まっています。本講演では、1)生活習慣で可能な老化予防(食事、運動、ホルミシス)、2)薬物療法(nutritheuticals)としてNADブースター薬、ラパマイシン、メトホルミン、3)老化細胞除去療法、4)細胞のリプログラミング、について紹介し、老化治療の意義や将来的な取り組みについても解説します。
 

7 歯周病と全身疾患(8月25日)

 消化管や気道では、粘膜免疫が異物や細菌・ウイルス感染を防いでおり、口腔は、その防御の最前線にある臓器とも言えます。歯周病は、口腔内の常在菌により、その粘膜免疫が破綻する結果、歯肉の炎症や歯槽骨の融解がおこり、やがて歯の脱落につながる疾患です。近年、歯周病は口腔内の病変にとどまらず、細菌やその毒素の血管内への侵入により、全身の疾患の原因となることが明らかになりつつあります。例えば、脳卒中、認知症、誤嚥性肺炎、慢性腎臓病、消化器がん、関節リウマチ、骨粗しょう症、早産、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、糖尿病、虚血性心疾患、動脈硬化などがあげられます。本講演では、その中でも歯周病菌(P.gingivalis)がアルツハイマー病の原因になるという報告と、細菌の出すタンパク分解酵素(gingipain)を標的とした新しい治療法の臨床試験について紹介します。また、昨今の新型コロナウイルス感染症と歯周病との関連についても紹介したいと思います。

8 顔面神経麻痺の診断と治療(9月22日)

 顔面神経麻痺は、主としてウイルスの潜伏感染が原因となって、或る日突然顔面の変形をきたし、涙の減少や目の痛み、さらには耳鳴や難聴、めまいなどの症状を伴う疾患です。とくに、ラムゼイ・ハント症候群の場合は、麻痺が遷延する可能性もあり、最近でも米国の有名な歌手である、ジャスティン・ビーバーさんがこの病状を動画で公開しています。早期のステロイドや抗ウイルス剤による治療が行われますが、顔面筋のリハビリテーションや、麻痺が遷延する場合には形成外科的治療も行われます。また、最近では高齢者の発症予防のために帯状疱疹ワクチンの接種も行われています。
 さて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン接種が行われていますが、この接種後に顔面神経麻痺(ベル麻痺)をきたすことが報告されています。ワクチン接種が免疫系に何らかの影響を与えたり、ウイルスを直接刺激する結果、潜伏感染していたウイルスが活性化されるのです。香港大学から発表された大規模な調査結果によれば、不活化ワクチン(CoronaVac,シノバック社)の接種で発症リスクが2.4倍になることがわかりましたが、事後解析を詳細に見ると、接種14日以降の発症ではmRNAワクチン(BNT162b2, ファイザー・ビオンテック社)でもそのリスクは3.8倍、2回接種では3.2倍となっているのです。このように、COVID-19ワクチン接種は、不活化、mRNAにかかわらずベル麻痺発症の要因である可能性が高いのですがその頻度は低く、COVID-19重症化予防のメリットがそれを上回るという結論になっています。

9 血圧が高いと言われたら (10月27日)

 高血圧とは、血圧がある一定の基準値以上になる状態であり、多くは症状がないため、健診などで高血圧が疑われてもなかなか病院を受診することができない疾患です。この血圧自体も、診察室で計るのか家庭で計るのかで測定値も異なり、病態によっては自由行動下血圧(24時間血圧モニタリング)なども測定されます。本邦での高血圧患者は4,000万人以上とも言われており、至適血圧にコントロールされている患者は全体の3割程度との調査報告もあります。
 本講演ではまず、本態性高血圧治療の概要、とくに薬物療法ではレニンーアンジオテンシン系作用薬(RA)を中心に解説します。この薬剤の市場規模は、カルシウム拮抗剤を抜いて年間6,000億円を超えたこともあり、最近では薬価改定などにより減少傾向です。単に血圧を下げるだけでなく、併存疾患などの病態に応じて臓器保護効果を重要視することも薬剤を選択する上では重要になっています。降圧の目的は、心血管合併症の減少にあるからです。次に、COVID-19の重症化予防としてのRAについての研究結果を紹介します。さらに、今後の高血圧治療のありかたを、オンライン診療、デジタル治療、医療DXの面から解説し、高齢者の高血圧治療の問題点と対策についても触れたいと思います。

10 生活習慣病と言われたら(11月24日)

 110歳以上の長寿者のことをスーパーセンテネリアンと言いますが、その特徴を一言で言うと、「よく食べて風邪をひかないこと」であると言われています。すなわち、胃腸と免疫の機能が最後までしっかり保たれることが長寿には重要なのです。ヒトは、口から栄養をとってそれをエネルギーに変え身体活動を行いますが、そのために発達したのが細胞内小器官であるミトコンドリアです。  
 生活習慣病とは、食習慣をはじめとした生活習慣が、その発症や進行に関与する疾患群で、心臓病、脳卒中、糖尿病や癌などがこれに相当し、日本人の主な死亡原因にもなっています。生活習慣にともなう肥満が原因となって食後高血糖、高血圧、高脂血症をきたし、血管病変が全身に及ぶことで生活習慣病にまで進展するという「メタボリックドミノ」という考えがあります。これを未然に防ぐために、特定健診・保健指導などが行われていますが、十分な効果を上げていないのが現状です。これらの疾病の発症原因としては、遺伝的な素因のみならず、環境要因に加え生活習慣要因が重要です。また、病態では一つの臓器のみならず、脳を中心とした消化管、肝臓、腎臓、膵臓との連関を、ホルモンや神経系を通じたフィードバック機構としてとらえる必要があり、それに関わる分子は治療薬としても期待されます。例えば、SGLT2阻害薬は、糖尿病の治療薬として登場しましたが、腎臓保護、心不全予防などの作用があることがわかっています。また、腎臓などの臓器には、環境によるエピゲノム変化による記憶のようなものがあると言われています。したがって、生活習慣病の根本的な治療は、老化の治療に通じるものと考えています。

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